人を幸せにするのは金か、家族愛か。持たざる者と持てる者が入れ替わった時、何が起こるのか。ファンタジックな設定ながら、富と幸福をめぐる極めてリアルで切実な物語が展開する作品です。 ある日、スンチョンは奇妙な老婆と出会います。その老婆は金のスプーンを見せ、ある条件を満たせば立場が入れ替わることをスンチョンに伝えます。 半信半疑だったスンチョンですが、大企業経営者の息子であるテヨンの宿題を手伝った縁で彼の家で過ごし、条件を達成すると、本当にテヨンと立場が入れ替わり、自分がテヨンとして大金持ちの息子になっていたのです。 反対にテヨンは、スンチョンの家の子となります。そして、2人の間にテヨンの幼馴染でスンチョンを好きになるジュヒなどが関わり、複雑な人間関係を形成していくのです。 本作のポイントは、学歴と格差です。韓国トップクラスの進学校には金持ちばかり。本作は、スンチョンのような若者はそもそも高い水準の教育を受ける機会が限られてしまい、格差が固定化されている現状を前提にしています。 もう1つのポイントは家族愛です。テヨンは実母を亡くし、父からも愛されていません。彼は父の過大な期待に応えられず、なんとか父に関心を向けてもらおうと、投資の課題をスンチョンにやってもらうのですが、それがばれてさらに見放されてしまいます。彼は富は持っているけれど、親の愛を知らないのです。それゆえ、貧しい家庭の子に入れ替わってはじめて、彼は親の愛を知ることになるのです。 人を幸せにするものは、金か家族愛か。これは古典的な二者択一ですが、今ほどその問いかけが切実な時代もないかもしれません。 こうした作品が多い背景は、実際に韓国社会が大きな経済格差に悩まされているからです。韓国の相対的貧困率は、OECD加盟34カ国の中で5番目に高い16.7%です。 加えて、韓国は元々超学歴社会でした。日本も学歴を重視する社会と言われますが、韓国は日本以上の学歴社会と言われます。そこに格差の問題が重なり、学歴を積むにはお金が必要なので、経済階級が固定化されてしまっている現状が生まれているのです。 本作のタイトルの由来は、韓国の固定化された階級を皮肉るスラングからきていると思われます。「スプーン階級論」と言って、英語の「銀のスプーン=裕福な家庭に生まれる」から生まれたものです。こうした言葉が流行するほど、韓国では一般的な感覚として格差問題が捉えられているということでしょう。 格差に苦しむ韓国の若者の姿は、日本人にとっても他人事ではなく切実な問題として胸に迫るでしょう。社会のあり方を考えさせるだけでなく、一級のエンタメとしても面白い、秀作ドラマです。 スンチョンは苦労しながらもその方法をやり遂げ、韓国一の大富豪であるトシングループの御曹司ファン・テヨンと入れ替わる。イ・スンチョンがファン・テヨンになり、ファン・テヨンがイ・スンチョンになったのだ。スンチョンは、あれほど夢見ていた金持ちの人生を送ることになったが、財閥の御曹司として生きるのも容易ではない。 そんなある日、スンチョンは父親のチョルが大ケガをして危篤状態だとの知らせを聞く。 両親を取り替えたという罪悪感と父親に対する切ない気持ちで、スンチョンは再び老婆を訪ねて行くのだが…。 © 2022 Disney and related entities.