iPhoneを長く利用していると、避けて通れないのが「修理」です。iPhoneをケースに入れていても、うっかり落として画面が割れてしまうことがあります。また、丁寧に使っていてもバッテリーはへたってくるので、だんだん駆動時間が短くなってきます。 修理はApple Storeや正規サービスプロバイダに持ち込むのがベストですが、店舗の数が限られる上に、非常に混雑しています。そこで気になるのが、正規店以外のサードパーティの修理業者です。ターミナル駅にはいくつもの業者があって、短時間での修理ができるのが魅力です。 そこで今回は、iPhoneを修理する際、正規店以外ではどんな業者に修理を依頼すれば安心なのか考察してみました。 【2019年版】iPhoneのバッテリー交換の実際と手順──予約申込や料金・待ち時間など

iPhoneの修理業者は数えきれないほどある

そもそもiPhoneを修理している業者は数え切れないほどあります。一説によると、サードパーティの業者だけで1000社を超えると言われており、日々増減しています。最初に修理先を整理しておきましょう。 まず、おなじみなのがアップル自体の修理で、Apple Storeに持ち込んだり配送で直したりできますが、混雑していることが多く、地域によっては店舗がありません。また、ほぼ同じ修理ができる正規サービスプロバイダが各地にあります。こちらも、Appleが公式に認めた修理事業者なので安心ですが、やはり混雑していたり、そもそも近くにないことがあります。 そこで正規店以外の修理業者への依頼を検討することになるのですが、どこに頼むべきか迷ってしまいます。同じ修理内容でも業者によって価格もバラバラなのです。最近は、修理業者のホームページや店頭に「総務省登録修理業者」と記載されていることがあります。この登録とは一体何なのでしょうか。また、安心して依頼できる目安になるのでしょうか。 今回は、米シリコンバレーで創業した世界最大級のスマホ・タブレット修理事業者の日本支社であり、Googleの正規サービスプロバイダにもなっているiCracked Japan(アイクラックト・ジャパン)の技術関係顧問・福島知彦氏にお話を伺いました。 【実録】Pixel 3の画面割れをGoogle正規サービスプロバイダーで修理してみた

iCracked Japanの公式サイトにも総務省登録修理業者と記載されている

iCrackedの渋谷ストア

今回、取材に応じていただいたiCracked Japanの福島氏

総務省登録修理業者は「登録」であり「認定」ではない

結論から言うと、総務省登録修理業者は選択の目安の一つにはなりますが、万全の信頼ができるかというと少し微妙です。実はこの仕組みは単なる登録であり、認定ではないのです。しかも、登録は機種ごとに行われているからです。 「弊社は12機種の登録を受けています。iPhone 5c以降のモデルに対応するので、最近使われているほとんどのモデルに対応できます」(福島氏) この登録では、修理をしても電波法に定められた「技適」に準拠できることを機種ごとに定めるのが目的です。つまり、その機種の修理について改造などに当たらないよう正しく直せる技術や手順を持っている業者、ということになるわけです。 修理後のデバイスを抜き取り検査するなどして、技適に準拠していることを総務省に申請し、認められると登録ができます。登録にはかなりのコストが掛かるので、多くの機種に対応している業者は数えるほどしかありません。たとえば「iPhone 6のみ登録」されている業者では、それ以外のモデルの修理については技適に準拠できない可能性があります。

技適マーク(出典:総務省) 「当店では、実質的に電波の出力に関わる部分は修理できません。アンテナや基板は修理対応外になります」(福島氏) 基板などが故障していた場合には、技適に準拠した修理ができない可能性があるので、Apple Storeなどの正規店を紹介しているといいます。逆に言うなら、基板まで修理している店はその時点でちょっと疑わしいわけです。

iCracked StoreでのiPhone修理の様子

iPhoneを修理する店を選ぶための目安は?

総務省登録修理業者とうたっている店舗では、対応機種を尋ねてみましょう。自分が修理したいデバイスが非対応の可能性もあるのです。 安心できる修理業者を探すには、いくつかのコツがあります。ここで、筆者が目安としている点も紹介しておきましょう。まず、修理のスキルは修理の量に比例します。来客が多く店舗数も多い店のほうが、小規模店よりは安心できるといえそうです。 その上で、価格にも気をつけましょう。激安で修理している店舗は、パーツも安いものを使っている可能性が高くなります。特にディスプレイの修理には注意したいところ。あまりにも安いパーツだと、表示している画像の色合いが変わったり、タッチに対する反応が悪くなったりと、リスクをはらんでいます。 「iPhoneの修理パーツは、純正品をアップルから買うことはできません。iCracked Japanでは、純正品と同等のディスプレイ部品を用意しています。また、予算を抑えたい方のために『US普及モデル』という形で互換パーツもお選びいただけます」(福島氏)

iCracked Japanでは、修理パーツ1つひとつにQRコードを付けて管理し、万一のトラブルの際にもすぐに情報を調べられるようにしている パーツの代金が違うので、修理料金も当然変わってきます。iCracked Japanの2つのパーツも、こだわる人には違いがわかるといいます。修理後、末永く快適に使えることはもちろん、パーツのクオリティをどこまで気にするかも選択の基準になるわけです。店頭で修理を依頼する際に、使っているパーツの質と純正との違いを、実例含めて見せてくれる店舗が安心です。 また、少々嫌らしい客になってしまうかもしれませんが、バッテリー交換の際には、PSEマークの付いたバッテリーを採用しているかを確認してみましょう。 PSEマークは、電気製品が原因の火災や感電などから消費者を守るために施行された電気用品安全法(PSE法)に基づき、安全性を満たしている適合製品であることを示しています。2019年2月にモバイルバッテリーもPSE法の規制対象となり、修理業者も交換に用いるバッテリーを単体で扱うことになるため、PSEマークを取得していなければならないからです。

iCracked Japanで利用している交換用のバッテリーには、PSEマークが付いていた。自社で品質をクリアしたバッテリーを用意し、PSEマークを取得している

まとめ:古いiPhoneの修理なら現実的な選択肢に

数年前までは、サードパーティの修理業者で直したiPhoneは、アップルでの修理を一切受け付けてもらえませんでした。しかし2019年春には、アップルが外部業者による修理を容認する方針に転換か──といった報道もなされました。 実際に方針が変わったどうかは定かではありません。しかし、最近はサードパーティの業者が修理した端末をアップルに修理に出しても、受け入れられるケースが案外増えてきているといいます。Apple Storeへの距離や店頭での待ち時間などを考慮し、そうした修理も選択肢に加えてもよいでしょう。自動車などは正規ディーラー以外でも盛んに修理されているので、同じような状況になれば、我々ユーザーとしては便利です。 もちろん「AppleCare」に加入しているなら、Apple Storeへ修理に出すのが一番安価で確実です。なお、iCracked Japanでは、最新モデルの修理はパーツの価格が高いため、Apple Storeより高くなるケースもあるそうです。古い製品ほどパーツ代がこなれているために割安に直せるのです。古いiPhoneを使っている人は、Appleでの修理をあきらめてサードパーティ業者での修理をすれば、時間と費用が節約できそうです。 構成・文:戸田覚 取材協力:iCracked Japan 編集:アプリオ編集部